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美しい近代和風邸宅
  
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「美しい近代和風邸宅」
     −遺産としての唐津・高取邸−
FS(FUKUOKA STYLE)vol.13 より抜粋
文=藤原恵洋

明治以降の近代化過程の中で、わが国の建築文化もまた独自の発展を遂げてきた。その主流を成すのは近代化を西洋化ととらえる立場であり、明治十年代の鹿鳴館主義に代表されるような「洋風」の概念が、欧化主義を喧伝した明治政府の主導のもと、中央から周縁に波及する。一方、明治二十年代初頭より、反動的とも見える固有のナショナリズム的建築の出現が知られる。

それは「洋風」に対することから「和風」と呼ばれるようになった建築群であるが、とりわけ外観や室内意匠などに江戸期までの伝統的な形式を内包した建築との差異を判別しにくいことから、その歴史的評価や遺産調査が立ち遅れていた。

こうした視点から見つめ直すとき、従来、日本近代建築士研究の対象として扱われていなかった和風の集会施設や学校といった公共施設から料亭、旅館、公衆浴場など、さらには、近代になって成立した国家新道関係に施設、社寺建築の研究者や修復担当技術師によって設計された復古調・擬古調の宗教建築をあらたに知るようになった。そしてそこには、近世までにはありえなかった近代期の建築的特徴が随所に隠されており、それらを丁寧に結び合わせていったところに日本的近代建築としての和風建築が位置づけられ、歴史的意義を与えられていくようになった。

「和風」の味わいの方は独特の解読術を必要とする。その地固有の文脈にコントラストを与えながら対峙していく洋風建築とは異なり。近代和風建築はその魅力を奥深く内に潜ませている。

江戸期から継承した和算による木割術と規矩術を母体とした建築文化が、明治以降の西洋化の影響、ついで襲うナショナリズム化の影響などを順次くぐり抜けながら技術的、思想的に華開いた時期でもある。さらに、1904年(明治37年)の日露戦争、大正期の第一次世界大戦などによる好況を背景に展開していく資本主義化の様相と密接にかかわりながら、歴史上最も優れた和風建築が生み出された時期といっても過言ではない。



藤原恵洋/ふじわらけいようプロフィール
九州大学大学院教授・建築史家・工学博士
九州大学大学院芸術工学研究院芸術情報部門芸術文化論講座
東京大学生産技術研究所第5部研究員

1955年(昭和30)7月7日熊本県菊池生まれ(本籍は阿蘇郡長陽村)。
1979年九州大学工学部建築学科卒業。
1982年東京芸術大学大学院修士課程修了。芸術学修士。
1988年東京大学大学院工学系研究科建築学専門課程博士課程修了。工学博士。 

東京大学生産技術研究所で故村松貞次郎名誉教授、藤森照信教授に師事。建築・都市・生活文化デザインを横断する日本の近代化過程を実証的に論考してきた。
代表的な研究論文は「日本近代建築における和風意匠の歴史的研究」(東京大学博士論文)。代表的な著書は「上海 疾走する近代都市」(講談社現代新書)。
 
  
千葉大学助手を経て、現在は九州芸術工科大学助教授。芸術情報設計学科芸術文化論講座において「芸術文化環境論」「芸術文化企画論」を講じる。同じく大学院芸術工学研究科では「芸術文化環境特論」を講じる。

  
美学会、文化経済学会、生活文化史学会等の学会活動も幅広く、日本建築学会歴史意匠委員会委員、日本デザイン学会評議員を歴任。
 
 
福岡県まちづくりアドバイザ−、国土庁タスクフォース委員、福岡県職員研修講師、福岡県社会教育センター生涯学習講師、大分県生涯学習研修講師、山口県未来デザイン大賞審査委員、福岡アジア文化賞選考委員会委員、福岡市総合計画審議委員、福岡アジア美術館運営委員会委員、北九州市職員研修所講師、RKB毎日放送番組審議委員等をつとめる。

専門分野
建築史、建築論、都市史、都市論、建築批評、デザイン史、デザイン論、生産技術史、美学、美術史、芸術文化論、ワークショップ論、住民参加論、アジア近代史

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